おもな眼科疾患の説明
白内障とは、目のレンズである水晶体が濁る病気です。
症状は、かすんで見える、ぼやける、まぶしい、眼鏡をかけても見づらい、淡い色の見分けがつきにくいなどです。
原因は加齢によるものが最多ですが、アトピー性皮膚炎や糖尿病などの合併症、生まれつきのもの、目の怪我によって発症するもの、ステロイド剤などを長く使用した場合におこるものなどがあります。
治療は、日常生活に支障がなければ、点眼薬や内服薬により白内障の進行を遅らせます。日常生活に不自由を感じるようになれば、手術を行います。手術は、濁ったレンズを取り除き人工のレンズ(眼内レンズ)を入れる方法が多く行われています。
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緑内障は、視神経(見たものを脳に伝える神経)が傷害され、視野(見える範囲)が欠けていく病気です。
人の眼は房水という液体が循環し、眼圧(眼の中の圧力)を調節しています。
房水の排出口(隅角)がせまい(閉じた)緑内障です。急に眼圧が著しく上がり、眼の痛み、頭痛、悪心などを生じる「急性緑内障発作」はこのタイプです。
隅角は狭くないが、房水の排出口が目詰まりを起こし眼圧が上昇する緑内障で、日本人に最も多いタイプです。中でも「正常眼圧緑内障」といって眼圧が正常範囲の緑内障が日本人に多いのが特徴です。
緑内障を見つけるためには、眼圧検査、眼底検査(眼の奥を詳しく観察する)、視野検査などをおこないます。
治療は、原発閉塞隅角緑内障にはレーザー治療または手術療法を、原発開放隅角緑内障にはまず薬物療法をおこない効果が不十分な場合はレーザー治療や手術をおこないます。
緑内障早期の視野障害はは自覚症状が乏しいことが多く、また一度失われた視野は回復しないと言われており、早期発見・早期治療が重要です。緑内障は現在日本人の失明原因の第1位であり、40歳以上の日本人の20人に1人が緑内障といわれています。40歳を過ぎたらぜひいちどは上記の検査を受けることをおすすめします。
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加齢黄斑変性は、網膜の中心にある黄斑部が障害される病気です。
目をカメラにたとえると、フィルムにあたる部分が網膜です。黄斑は、色や形を識別する視細胞が集中している網膜の中心部です。
加齢黄斑変性は、滲出型と萎縮型に大別されます。
滲出型は、黄斑の脈絡膜から網膜に向かって異常血管が生えてくるものです。異常血管はもろいので、簡単に出血したりむくみをおこします。その結果、黄斑の視細胞が急速に機能が衰えます。
萎縮型は、網膜の細胞と脈絡膜が徐々に死んでしまい、黄斑の機能が徐々に悪化していきます。
症状は、ものを見ようとした視野の中心が最も影響されます。具体的には、ゆがんで見える、視力低下、真ん中が暗く見えるなどです。
診断は、視力検査、眼底検査、蛍光眼底造影、光干渉断層計検査 (OCT) などを行い、病変の部位と大きさを確認します。
治療は、滲出型に対して抗VEGF療法、抗血管新生療法、光線力学療法 (photodynamic therapy: PDT)、レーザー光凝固などを行います。萎縮型に対する有効な治療法がないのが現状です。
加齢黄斑変性は、欧米では以前より失明原因の主要な要因であり、近年日本でも高齢者の増加により患者数が増えています。喫煙は危険因子です。また、滲出型の症状発生の予防にサプリメントを服用する場合があります。
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ドライアイは、涙液(なみだ)の減少あるいは質的な変化により眼の表面に障害を生じる疾患です。
症状は、乾く・ごろごろするだけでなく、疲れる・なんとなく不快感がある・目やにが出る・重い感じがする・かすむ・涙が出るといったさまざまな症状をきたすことがあります。
診断は、細隙灯顕微鏡(スリットランプ)を使って、角膜や結膜に傷がついていないか調べます。検査は、涙の量を測る(シルマー検査)や涙の安定性を調べる(涙液層破壊時間:BUT検査)などを行います。
治療は、症状が軽い場合は潤いを持たせる目薬を点眼します。重症の場合は、涙の出口である涙点に栓(涙点プラグ)をすることもあります。
長時間のVDT作業や運転は、まばたきの回数が減りドライアイ症状が悪化するので、適度な休みを取ることが重要です。コンタクトレンズの装用時間を減らすのもひとつの手です。目の保湿を図るために、加湿器を用いるなど周囲の環境に気を配るのも有効です。
結膜は、眼球の白目やまぶたの裏をおおっている透明な膜です。結膜炎は、結膜に炎症を起こす病気の総称です。
原因は、細菌によるもの以外に、ウイルスやアレルギーによるものなどがあります。
症状は、眼が赤くなる、めやにが出る、痛い、かゆいなどです。
治療は、原因に合わせた目薬を使用します。
中でもウイルス性結膜炎は非常に伝染力が強く、お子さんは学校を休むなど措置が必要なことがあります。早めに眼科を受診し、適切な診断と必要な治療を受けることが大切です。
飛蚊症とは、「目の前に黒いものが飛ぶように見える」症状のことです。
原因のほとんどは、加齢に伴う生理的(異常ではない)飛蚊症ですが、なかには(1)網膜裂孔・網膜剥離(2)硝子体出血(3) ぶどう膜炎といった、治療をしないと視力が傷害されうる「病的」なものがあります。
眼底検査(前述)などをおこない診断します。早めに眼科を受診し、適切な診断を受けることが重要です。
糖尿病患者は世界で約3億6600万人、日本で約1070万人いるといわれ、日本を含むアジア諸国で今なお増加しています。眼科疾患として、緑内障、白内障、眼筋麻痺、視神経障害、角膜症などさまざまな障害がおこりえます。なかでも頻度が多いのが、糖尿病網膜症です。
眼球の内側には網膜というカメラのフィルムにあたる膜があり、多くの毛細血管が分布しています。糖尿病の患者さんの血液は、糖が多く粘性が高いため、網膜の毛細血管を詰まらせたり、血管の壁に負担をかけます。その結果、網膜に酸素や栄養素が不足し、眼底出血をを起こすことを「網膜症」といいます。進行した場合には硝子体で大出血が起こり、失明に至る場合もあります。
糖尿病網膜症は、かなり進行するまで自覚症状がない場合もあり、まだ見えるから大丈夫という自己判断は危険です。糖尿病の方は年1回は眼科を受診し、眼底検査等を受けるようにしましょう。
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